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障害者の3つの裁判交流集会

障害者の3つの裁判交流集会チラシ
集会風景 11月27日「障害者の3つの裁判交流集会」 たくさんの皆様にお集まり頂きました。 どうもありがとうございました。

集会風景
障害者の裁判に関わって-3つの裁判を題材に(配布レジメ)

   

2011年11月25日
     弁護士 中谷雄二

1 3つの裁判の紹介
(1)小池代読裁判
(事案の概要)

 発声障害を持つ小池公夫さんが中津川市議会議員として代読を発言を希望したのに、中津川市議会が代読を拒否し、4年間の任期中、一般質問が一度もできなかったことに対し、代読に反対した議員及び中津川市に対して損害賠償を求めて訴えた事件。
(裁判の現状)
 一審岐阜地裁では、一部の時期のみを捉えて如何に障害者に利益になるとはいえ、障害補助手段を強制してはならないとして損害賠償を認めた。現在、双方控訴中。次回、証人の採否を決定する予定。

(参照/「小池公夫のホームページ」http://www.geocities.jp/chocoball1018/)

(2)梅尾点字裁判
(事案の概要)

 視覚障害を有する梅尾朱美さんが、自立支援法に基づくサービスを受ける前提として、障害程度区分認定を受けたところ、障害の状況は全く変わっていないにもかかわらず、最も重度の区分4から軽い1へと変更されたことを巡り、障害程度区分認定の取り消しを求めて名古屋地裁に点字で訴訟を出し、点字で裁判を受ける権利を問うている事件。
(裁判の現状)
  現在、一審(名古屋地裁)で、弁論(双方の主張と証拠書類の提出、証人の申請などを行う手続き)の途中、裁判所が被告提出の重要証拠について点字化を命じるかどうかがポイントであったが、裁判所は自ら外注により証拠の点字化を行うことに踏み切った。障害程度区分認定の認定調査員の証人採用をさせるかどうかが重要なポイントであるが、裁判所はまだ判断を留保している。

(3)伊藤生命の価値裁判
(事案の概要)

 15歳(守山養護学校高等部1年)の伊藤晃平君(知的障害・自閉症)が、将来の社会適応を考え、ショートステイをしていた施設において、施設職員2名と2階で一緒に寝ていたところ、午前5時頃、目覚めて起きあがったのを見た職員が「トイレ」と声を掛けたところ、晃平君はそのまま扉を開けて階段から外に出て、階段を転落し、急性硬膜下血腫により同日夜死亡した。その補償をめぐる交渉において、保険会社担当者が、「生きていても社会的に価値のない事案」として、逸失利益(将来得られる収入)をゼロとして補償額を提示、生命の価値に差別を付けるものとして、障害のない子と同様の基準による損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した事案。
(裁判の現状)  前回、当日の担当していた職員1名、言語療法の専門家証人、原告(お母さん)の三人の尋問を実施。鍵がかからない状態で、立ち上がり階段の方に行った晃平君を職員二人が布団の中から見ていたこと、晃平君が起きあがってから14分程度の時間が経って消防署に連絡をしていること、その前には意識を無くし、失禁していた状態の晃平君の失禁の始末をしていたことなどを証言、重大な事故と認識していなかったこと、自閉症の方の対応の基本も知らなかったことが浮き彫りになり、施設の側の体制の問題も明らかになった。また、晃平君の幼稚園時代から高等部までの毎日の家庭と園・学校の連絡帳の分析により、晃平君の発達の経過とそれを踏まえれば適切な援助があれば発達可能性があったこと、法の整備や環境の変化を考えれば就労可能性があったことを具体的・説得的に証言。また、子どもを亡くした親の気持ちや障害を特別なものと考えずに家族の一員として受け入れ、その発達を他の家族の喜びとしてきたこと、それを奪われたことの苦痛、死亡した途端に価値なきものと扱われる理不尽さを訴えた。次回、結審予定。

2 3つの裁判の位置づけ(どういう問題なのか?)
(1)小池さんの代読裁判も梅尾さんの点字裁判も、障害者が生きている間の差別の除去(権利の行使の障害を取り除くよう)を求める裁判。

 憲法や法の建前では、生きている時期に障害があるか健常者かで差別を許さない筈。ところが、実際には、障害者は社会生活を営む上で健常者が普通に行えていることが、一つ一つ大変な苦労をしないと獲得出来ない状況にある。法が建前として認める権利行使、議員としての議会での発言、裁判を受ける権利の行使を行うにあたって、障害を理由として権利行使が認められない現状を告発し、その変更を求める裁判。
(2)伊藤晃平君の裁判は、生きている時には建前だけでも差別をしてはならないといっていたのが、死亡した途端、あからさまに差別され、極めて低い賠償額を突きつけられるという差別の問題。
 事が遺族の補償の問題であれば、死亡した人が障害者かどうかによって差別を付けられる理由は全くない。家族を亡くした遺族の感情に違いはない。遺族の生活保障の問題は本来、損害賠償の問題ではない。結局、人を金を稼ぐ道具とみ、その側面のみを強調することにより、発生する差別の問題。その是正を求める裁判。

3 何故、このようなことが起こるのか?
(1)背景にある「人間の尊厳」に対する理解の欠如

 言葉としては存在していても日本社会の中に「いかなる人間も固有の価値を持ち、他人からその価値・存在を尊重されて生きる権利」があることに対する理解と共感がない。
 第二次大戦後の西欧社会における基本的な理解-ドイツ「人間の尊厳」条項。ナチスの優性思想に基づく人間性の破壊と虐殺の体験を内面化し、制度化したものとしての闘う民主主義-自由と民主主義を破壊する言論を許さない。平和に対する罪、人道に対する罪という概念の確立。
 過去のいかなる行為について過ぎたこととして、「水に流す日本人的心性」による徹底した責任追及の欠如と皮相的な人間観が、「人間の尊厳」を理解し、共通のものとすることを妨げた。
 今日も日本社会に存在し、流布する人種・民族差別的発言、障害者差別発言、(障害者は)分をわきまえろという議論。人の尊厳を傷つけることに対する鈍感さ、寛容さ。
(2)少数者の権利実現のための制度の遅れ
 ア 少数者 例えば、障害者の権利を法律で認めても、その実現の制度や権利侵害に対する救済の制度を設けないことによる、権利の画餅化(絵に描いた餅)。

   法制度の遅れ-立法府の問題
   法実現の遅れ-行政府の問題
   救済の遅れ-司法の問題
   それを支える社会の意識
 イ 障害者の生きていける社会の構想の不足
   制度としての障害者福祉制度の構想-社会の富をどう分配するかの問題
   制度設計としての出生、生育環境、教育条件、就職、社会福祉制度、福祉サービスの提供の制度-人が生き、社会生活を営み、死んでいくまでをどう保障するのか、発達すること、働くことをどう位置づけるのか。
 ウ 現に生きている障害者の現にある権利のバリア(障壁)の存在
   障害者差別法-条例 そのための制度(救済機関)の必要性
   様々に存在する差別-3裁判の事例
     *議員が自らの臨む方法により発言する権利
     *点字で裁判を受ける権利
     *差別なく補償を受ける権利
     個別の救済を担当する司法においてこれらの権利を確立することによる世論への影響

4 私たちは何をしなければならないか
(1)個別救済-裁判での勝利
(2)世論に問題の存在をアピールすること 差別の存在を訴える=問題提起
(3)裁判の勝敗にかかわらず、今後、これらの問題の発生を防止するための制度化、立法化を求めること
(4)裁判は障害者=少数者を差別する社会を変革するための一手段
   裁判の後の運動の重要性-問題提起をどう継続させ、変革につなげるか?
(5)何を重視するかは、自分が決めること-様々な課題の中で自分にとってのその時々の最も重要な課題を明らかにすること-それこそが自己実現(他人に干渉される筋合いのない)-「~だから~すべき」という考えは、自己が決めるべき自分像を他人が押しつけるもの
(6)自分自身の選択で、少数者・障害者の権利確立のための運動への参加を
以上。