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障害者の逸失利益 判例

アルバム紹介

札幌地裁

重度自閉症の少年(当時17歳)の交通事故死の損害賠償訴訟で、2009年(平成21年)12月4日、札幌地裁で、「重度障害者の将来の可能性を認め、最低賃金を 算定の根拠にして」、逸失利益を認める和解が成立した。
北海道交通事故被害者の会会報

重度障害者に逸失利益 死亡事故賠償訴訟 札幌地裁案で和解 (2009年12月4日北海道新聞)
 生きていれば得られたはずの収入「逸失利益」を加害者側の保険会社がゼロ円としたのは不当だとして、交通事故で死亡した自閉症の長男=当時(17)=の札幌市在住の両親が、加害者の運転手らを相手取り、逸失利益約4千万円を含む約7300万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、札幌地裁(中山幾次郎裁判長)で和解が成立した。約1563万円を逸失利益とみなし、加害者側が計約4013万円を支払う内容。
 弁護団によると、損害賠償訴訟で、軽・中度の障害者の逸失利益が認められた判決や和解はあるが、重度障害者で逸失利益が事実上認められたのは全国でも初めて。札幌地裁は、和解案の算定根拠として、当時の道内の最低賃金(時給641円)を基に、週休2日で1日8時間労働できたものと見込み、生活費等を除いた約1131万円を提示。さらに20歳から65歳までの障害年金計約431万円を加え、逸失利益とみなした。これに慰謝料などを合わせて約4013万円とした。
 支払いについては、すでに原告は自賠責保険で3千万円を受け取り済みのため、加害者と事故当時付き添っていたヘルパーが計約1千万円を支払う。
 訴状によると、重度の自閉症だった長男は2005年8月、ヘルパーとともに路線バスを利用して札幌市内の公園へ出かけた際、乗用車にはねられ死亡した。加害者側の損害保険会社は、長男が受け取るはずの障害年金も将来の収入と認めず、逸失利益をゼロ円と算定した。
 原告代理人の児玉勇二弁護士は「最低賃金を算定根拠に逸失利益を認めたもので、極めて画期的な内容」と評価した。

司法:重度障害者に逸失利益 最低賃金を考慮 交通事故死和解 札幌地裁 (2009年12月5日毎日新聞)
05年に札幌市で交通事故死した重度の自閉症の少年(当時17歳)の両親が運転手と付き添いのヘルパーに、平均賃金に基づく逸失利益約4280万円を含む計約7340万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、札幌地裁で和解が成立した。中山幾次郎裁判長は和解金算出に逸失利益として道の最低賃金などを考慮したとしており、運転手ら側は約1560万円と算定された逸失利益を含む計4010万円を支払う。両親側は「逸失利益が認められた。画期的和解だ」と喜んでいる。
 訴状によると、少年は05年8月、札幌市内で女性の運転する乗用車にはねられて死亡した。両親は女性が注意を怠ったなどと主張。損害賠償を求めたが、女性の加入する損害保険会社が提示した賠償額の見積もりで逸失利益の算定は0円で、総額も自賠責保険の支払限度額の約3000万円にとどまった。
 中山裁判長が示した和解金の算出根拠は、道の最低賃金(年130万円)に係数を掛けた約1130万円▽重度自閉症を障害年金1級と想定して20~65歳分の約430万円。これらは和解条項に明記されなかったが、両親の代理人によると、重度知的障害者の逸失利益が事実上、認められたケースは今回が初めてという。
 和解成立後に記者会見した両親は「障害者の可能性を認めてもらえ満足しています」と話し、言葉を詰まらせた。【水戸健一】
    ◇
 損害賠償論に詳しい立命館大法学部の吉村良一教授(民法)の話 逸失利益は人の命を金で測る便宜的な方法。これまでは、健常者の平均賃金という確実性の高いものだけが逸失利益を算出する物差しとされ、健常者と障害者で不合理な差が出ることもあった。それを修正するための一つの手がかりとして、障害者の逸失利益の算出に最低賃金を用いたことは大きな問題提起。和解でなく、判決であればもっと強いインパクトがあった。
    ◇
 逸失利益 事故による被害者死亡や後遺障害がなければ得られたはずの収入を仮定して算出したもの。生活費分を控除した年収に就労可能だった年数と中間利息を考慮した係数をかけて計算する。一般的に将来の稼働能力が事故前にあったことを立証できなければ、認定されない。

しんぶん赤旗
(2009年12月20日赤旗)
 和解には、事故がおきかねない停留所周辺の構造を、バス会社が「障害者に配慮する改善を行う」との内容も含まれています。(以上抜粋)

【民事訴訟における和解の考え方】
 一般に、裁判は、判決こそが決定的な判断と思われていますし、報道でも鬼の首でもとったかのように大きく取り上げられます。比して、和解による終結は、曖昧な妥協の産物と思われることが多いのですが、現実には必ずしもそうとは言えないものがあります。
 裁判では、まだ見ぬ将来の収入見込みについて「相当程度の蓋然性」(可能性の確かさの度合いで通常80%以上とされる)を突き詰めて立証することが原告に課せられ、あたりまえながら、未来を予測して断じるには、神のみぞ知るいささか常軌を逸した弁論を展開しなければなりません。
 裁判は、双方の主張の勝敗を決めるものですから、何が正論なのか何が正義なのかはともかく、勝つか負けるかはなんとも言えぬ状況にあります。さらに、判決の場合は、負けたほうが控訴することが多く、原告個人の負担は続きます。
 しかし、和解する場合は、賠償金以外の条件をつけることが可能になり、それこそが原告の第一義に望む要求であったりする場合があるわけです。判決の場合は、原告被告の双方ともに条件をつけることはできません。また、和解案は裁判所からの提示である場合が多く、その内容には裁判所の判断が反映しています。
 ですから、裁判官から金額が提示され、バス会社に改善を約束させた豊岡裁判のような勝訴的和解は、判決以上に勝利したとも言えるでしょう。(伊藤晃平君裁判を支援する会 弓削光彦)

青森地裁

朝日新聞  重度知的障害のある男性(当時16歳)の施設内で入浴中の死亡事故の損害 賠償訴訟で、平成21年12月25日、青森地裁で、「一定程度の就労可能性 はあった」と逸失利益を認める判決があった。


重度障害者死亡逸失利益訴訟:重度障害者に逸失利益 青森地裁が初認定(2009年12月26日毎日新聞)
◇施設で死亡
 北海道北斗市の知的障害児施設で04年、重度の自閉症の長男(当時16歳)が入浴中におぼれて死んだのは、施設側が安全配慮を怠ったためとして、青森県野辺地町の両親が施設を運営する社会福祉法人「侑愛会」を相手に、逸失利益など約7340万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、青森地裁(貝原信之裁判長)であった。貝原裁判長は約600万円の逸失利益を認め、慰謝料などと合わせた約3247万円の支払いを命じた。
 重度障害者の事故を巡る逸失利益の訴訟は、大分地裁が04年に「将来の労働能力を認めるのは困難」と退けるなどしている。原告側弁護人によると、最低賃金を基に支払金が算出された和解例はあるが、判決は初めて。
 貝原裁判長は判決で「障害者への理解は徐々に深化している」とし、長男が就労する可能性を判断。支援などを受ければ、授産施設より高い賃金を得られる状況にあったと認定した。その上で「社会条件の変化を考慮すれば、最低賃金に相当する収入は得られた」として、当時の青森県の最低賃金に基づき、得られたであろう収入から生活費などを差し引き、逸失利益を約600万円と判断した。
 損害賠償論に詳しい立命館大法科大学院の吉村良一教授(民法)は「社会状況の変化や重度障害者が発達していく可能性を認めており、意義のある判決だ」と評価した。
 判決によると、長男は04年7月、寮で入浴中にてんかん発作を起こして水死した。施設職員は発作の危険性を認識していたのに見守りを怠るなどした。同法人は「安全管理に万全を期す」とコメントした。【山本佳孝】

重度障害児に逸失利益 青森地裁、就労可能性認める(2009年12月26日河北新報社)
 北海道北斗市の知的障害者施設で2004年、重度の自閉症とてんかんの入所者の男子=当時(16)=が入浴中に死亡したのは施設側の不注意が原因だとして、青森県野辺地町の両親が施設を運営する社会福祉法人などに計約7300万円の損害賠償を求めた訴訟で、青森地裁は25日、逸失利益約600万円を含む約3250万円の支払いを命じた。
 貝原信之裁判長は施設側の過失を認めた上で、争点となっていた逸失利益について「男子は簡単な作業ができ、一定程度の就労可能性があった」と指摘。当時の青森県の最低賃金額に基づき、就労可能な67歳まで働いた場合の収入から生活費を差し引いた分を逸失利益として認めた。
 原告側代理人によると、重度障害者に逸失利益が認められた判決は全国初といい、「画期的な判決だ」と評価。記者会見した両親は「判決が障害者らの生きる希望になればいい」と述べた。
 判決によると、男子は04年、入浴中にてんかんの発作を起こし、死亡した。施設の職員は発作の危険性があることを認識していたが、男子の見守りを怠った。
 原告側は平均賃金を基準にした約4075万円の逸失利益を求め、施設側は男子に就労可能性はなく、逸失利益はないと主張していた。

逸失利益認める判決に両親安堵(2009年12月26日朝日新聞 青森)
■「働ける可能性認めてくれた」 逸失利益認める判決に両親安堵

 「障害者も働けるという判断をしてくれた」――。北海道北斗市の知的障害者施設で重度障害の男性(当時16)が入浴中に死亡した事故をめぐる損害賠償訴訟で、青森地裁(貝原信之裁判長)が25日、男性が将来働いて得られたはずの逸失利益を認める判決を言い渡したことに、遺族らは「画期的だ」と評価し、2年8カ月の裁判の末の「勝訴」に、ほっとした表情を見せた。(有近隆史、藤原慎一)
 これまでの裁判では、重度障害者の逸失利益はないとの判断が続いてきた。実際に知的障害者が働いている現実があるのに、司法の場では「(障害者が)社会で働ける場所がないような認定だ」と指摘されてきた。
 これに対し、今回の判決は男性について「一定程度の就労可能性はあった」とし、県内の1時間あたりの最低賃金額605円(2004年当時)をもとに18歳から67歳まで50年間働いたと算定。生活費などを差し引いて約600万円の逸失利益を認めた。
 一方で、遺族が主張していた「健常者並みの逸失利益」は「現状として一般企業で働く知的障害者はごく少数で、一般企業での就労が極めて困難なことは否定できない」として、平均賃金ではなく最低賃金での算定となった。生活費についても健常者よりも多く差し引いた。
 大筋で主張が認められたことに、判決後の記者会見で男性の父親(50)は「障害者もその家族も生きる希望になればと思う」と話した。
 また、原告側代理人の児玉勇二弁護士は「逸失利益が認められたのは画期的。障害者への差別が今後修正されていくことになるだろう」と、判決が社会に与える影響に期待を寄せた。さらに、「全国の同様の裁判にも励みになる」と述べた。

青森地裁判決、確定へ 重度障害者に逸失利益認定(2010年1月7日河北新報)
 障害者施設に入所中の男子の死亡をめぐり、青森県野辺地町の両親が施設の運営法人に損害賠償を求めた訴訟で、重度障害者に逸失利益を初めて認めた青森地裁判決に対し、原告、被告側は6日までに、控訴しないことで合意した。原告側代理人が明らかにした。
 原告側代理人は「判決が確定することで、保険会社は今後、同種事案で判例に則して保険金を支払うことになる。相当な影響を与える」とコメントした。
 訴訟は、北海道北斗市の知的障害者施設で2004年、自閉症とてんかんで入所していた男子=当時(16)=が入浴中に死亡したのは施設側の不注意が原因だとして、両親が運営法人などに約7300万円の損害賠償を求めた。
 青森地裁は昨年12月、争点の逸失利益について「男子は簡単な作業ができ、一定程度の就労可能性があった」として、逸失利益約600万円を含む約3250万円の支払いを命じた。

重度知的障害者の逸失利益認定 全国初の判決、きょう確定(2010年1月8日読売新聞)
 北海道北斗市の福祉施設で2004年、入浴中に死亡した重度知的障害者の少年(当時16歳)の両親(野辺地町在住)が施設を運営する社会福祉法人などを相手取り、約7300万円の損害賠償を求めた訴訟で、生きていれば得られたはずの逸失利益を含む約3200万円の支払いを命じた青森地裁の判決について、原告、被告側ともに控訴しない方針を固めた。これにより、控訴期限の8日、判決が確定する見込み。原告側の弁護士によると、重度知的障害者の逸失利益を認めた全国初の判決となる。

 「お母さん頑張ったよ。ずっと見守ってくれてありがとう」
 少年の母親(51)は判決が言い渡された昨年12月25日、傍聴席で抱えた遺影に小さな声で語りかけた。事故から5年5か月、提訴から2年9か月たっていた。

 「息子さんがお風呂でおぼれて…」。04年7月21日、自宅近くのスーパーで買い物中、施設の職員から携帯電話に連絡が入った。翌日帰省する息子にと、好物の焼き肉の材料を買い込んでいる最中だった。「明日から夏休み。おうちに帰るから目を開けて。起きて、起きて」。駆けつけた警察署の安置室で、冷たい息子の体を何度も揺すった。

 息子は持病のてんかん発作を起こし、入浴中におぼれた。職員は事故時、付き添っていなかったと知った。「以前にも発作を起こしているのに、なぜ」。施設の管理に疑問がついて回った。その疑問に、施設が示した文書が拍車をかけた。「逸失利益はゼロ」ー 。生きていれば得られた収入はないと、損害賠償を巡るやり取りで告げられた。
 「重度の知的障害者の逸失利益を認めた判例はありません」。相談した弁護士に教えられた。それでも、「踏み台になってもいい」と提訴を決めた。「スキーは上級者コースを滑れたのに。一人で電動工具が操作でき、施設も作業能力があると言ってくれていたのに……」。07年3月、息子の名誉のため訴えを起こした。

 「重度知的障害者がなぜ7000万円以上も取るんだ」。中傷の手紙に胸を痛めたこともあった。「我が子に値段をつける親なんていない。金額はどうでもいい。尊厳を取り戻したいだけ」。勝訴を告げた判決後、涙声を絞り出した。「息子の命は判例となって生き続けます」

 判決の確定する8日には、あの日食べさせてやれなかった焼き肉をこしらえるつもりだ。「大好きなカルビや牛タン、おなかいっぱいに食べてね」(木瀬武)
   
障害者死亡で逸失利益認定確定へ 双方控訴せず (2010年1月9日陸奥新報社)
 特別支援学校の寮で2004年、重度障害者だった長男=当時(16)=が入浴中に死亡したのは学校側の責任とし、野辺地町の両親が学校設置者(北海道北斗市)などを相手取り損害賠償を求めた民事訴訟で、長男の逸失利益を認定した青森地裁の一審判決について双方が控訴しないことが6日、分かった。
 原告側の児玉勇二弁護士(東京)が明らかにした。全国で初めて、重度障害者の逸失利益を認定した判決が確定する。
 昨年12月26日の一審判決で、青森地裁の貝原信之裁判長は「重度の知的障害を抱えながらも、相当の賃金を得ることができた可能性は否定できない」とし、長男の逸失利益約600万円を認定、計約3250万円の支払いを命じた。
 児玉弁護士によると、「判決を互いに尊重し、双方控訴しない」「被告は長男が入浴中に死亡したことに関し責任を認め、深謝する」ことなどで合意したという。児玉弁護士は「今後同種事案があった際の保険金支払いなどに相当な影響を与えることになる。画期的な判決となるだろう」と述べた。